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「健康365」アレルギーの跋扈(ばっこ)

月刊健康情報誌『健康365(サンロクゴ)』

木俣院長の提言コラムが採用されましたので、以下に全文を記載し、お知らせいたします。

過去に掲載された木俣院長の提言

アレルギーの跋扈

食材や日常生活の様式の変化で、数年前から色々なアレルギーが増している。

その中で、1)ジャガイモアレルギー、2)トマトアレルギー、3)ラテックスアレルギーについて述べる。

大切なことはこれらが生活習慣で増加していることで、それを理解せずにいると次第に強い症状が発症する方が増加し、ある場合はアナフィラキシーを発症する。しかし生活習慣を変えることでその予防もできるので、その理解が肝要である。しかしこれらのアレルギーについての日本の現状は情報と理解が不足して、アレルギー検査もされない現状では将来への危機感が募る。

またアレルギーの検査法も日本では多くの医師が血液検査に依存するが、それは偽陽性や偽陰性が多い。海外ではプリックテストという皮膚を使ったより感度が高い検査を併用している。

プリックテストは皮膚にアレルゲン液を落とし、特殊な針で軽くひっかき15分後に出現する膨疹の大きさを測定する。採血の痛みもなく、僅か15分後に判定できる、患者さんへ負担が少ない、医学的に有用な検査である。

1) ジャガイモアレルギー

Aさんはピザを食べて呼吸困難、顔面の腫れでアナフィラキーを発症し受診した。近医で検査したが、ピザの主成分の小麦は陰性で原因不明ということで困惑していた。私はピザに混入されている成分を全てプリックテストで検査し、ジャガイモが強陽性であった。尚、小麦や牛乳や卵は陰性であった。Aさんはポテトチップも好きで、ジャガイモを摂取することが多かった。ジャガイモを除去し、抗アレルギー薬を継続内服し、その後ジャガイモアレルギーはプリックテストで陰性化して、摂取しても症状も出ることがなくなり治癒した。この例は最初ジャガイモへのアレルギーがなく、摂取でアレルギーを獲得し、その後アナフィラキシーを発症するまでジャガイモアレルギーが強くなったことを示す。食物アレルギーは摂取しても症状がでない内に発見して予防や治療をすべきである。

その例を経験して、私は受診される患者さんにジャガイモ摂取で症状の有無を問診で聞き、ブリックテストでジャガイモアレルギーを確認した。するとジャガイモ摂取で、ある方は口が腫れ、別の方は咽頭の絞拒感があり、更に別の方は全身の辛みがあった。皆、検査ではジャガイモが強陽性であった。ジャガイモを除去し、抗アレルギー薬を継続内服して、ジャガイモアレルギーは治癒した。ジャガイモ摂取で症状の無い方もプリックテストをすると、ジャガイモの陽性者が次々に検出された。しかも陽性者は年々増加している。最初は受診患者の1-5%が陽性で、それが10%になり20%を超え、現在は40%を超えている。ある日の当院の外来患者56人中、治癒例を含んだジャガイモアレルギー例は32人(57.1%)であった。治癒例の9人を除くと、23人(41.0%)となる。しかも初診の患者でもジャガイモ摂取で色々な症状の出ている方が増えてきた。当院の1ヶ月の受診者数は約650名から750名で、それらの方でジャガイモアレルギーを数えても現在アレルギーのある方40%を超えている。患者さんの内訳はアトピー、アレルギー性鼻炎、食物アレルギー、喘息、慢性蕁麻疹等で、現在これら全てのアレルギー疾患を合わせると日本の50%以上をこえる。つまり日本人のアレルギー疾患の方50%の内、41%がジャガイモアレルギーで、単純計算すると日本人の約20%がジャガイモアレルギーとなる。これは日本の健康の危機ではないか。

 

ジャガイモアレルギーの多い理由について、食材を開べると添加物として馬鈴デンプンや加工デンプンが非常に多くの食材に入っている。つまり人は知らないうちにジャガイモを摂取している。ジャガイモアレルギーでもジャガイモをできる限り除去するとアレルギーが治癒することから、食生活の重要性が判る。逆に言うと放置しておけば、ジャガイモアレルギーが蔓延してそのうちジャガイモ摂取でアナフィラキシーを発症する例が増加するリスクもある。食材としてのジャガイモは栄養の点からも良いが、添加物としての馬鈴薯デンプンや加工デンプンは不要ではないか。海外ではジャガイモアレルギーの報告は多く、アナフィラキシーの例も小児や成人で詳細に報告されている。日本でアレルギーを診療している医療機関での、統合的な情報交換が望ましい。またアレルギーの症状も多岐に渡るので、できるだけ多くの典型的、非典型的な情報が必要である。

 

Bさんは軽度アトピーがあるが、最近食後に腹痛がよくあり、胃内視鏡の検査をしても異常所見はなく、採血も正常範囲内で原因不明で困惑していた。アトピーはかゆみも強くなく外用薬もなしで生活できるので治療をしていなかった。しかしある時、手が急に痒くなり赤い隆起もでき、近医を受診したら蕁麻疹ということであった。昔、ステロイド塗布していて改善せず中止して自然に改善したが、長期間かかったその時の経験からステロイド以外の薬を希望した。するとコレクチムという外用薬を処方された。しかしコレクチム塗布で症状は悪化した。そこでもう一度その病院にいくと、モイゼルトという外用薬を処方された。だがモイゼルト塗布で、赤い隆起は全身に広がった。そこで当院を受診した。アトピーに全身の単純ヘルペスを合併していた。蕁麻疹は一つもない。糜爛もあり、じくじくの浸出液も多く細菌感染の合併を考え、抗アレルギー薬と抗へルペス薬と抗生剤を投与した。細菌培養の検査ではMRSAが検出されたが、それを予想して処方した抗生剤は効果的で、赤い隆起は著明に改善していた。問診で腹痛が起こる前によく食べる食物をきくと、心当たりがないという。そこで具体的に食べた物を言って貰うと、ジャガイモの頻度が多かった。そしてプリックテストではジャガイモが強陽性で、ジャガイモアレルギーでの腹痛であった。ジャガイモをできる限り除去し、抗アレルギー薬を継続内服すると腹痛はなくなり、その後プリックテストでジャガイモも陰性化した。

2)トマトアレルギー

Cさんは咽頭の違和感や呼吸困難が、食後によくおこるのに気がつき当院を受診した。昔、咳と強い呼吸困難に続きアナフィラキシーを発症した。救急病院で治療後、血液検査をしたが原因の食物は見つからなかった。Cさんはまた同様な症状が起こるのを心配して、アレルギーの専門家を探して当院を受診した。その頃私はジャガイモアレルギーに気がつき、関連のある食品のトマトにも注意していた。Cさんにトマトにつき問診すると、よくトマトを食べているが関連性は不明と言う。そこでプリックテストをするとトマトが強陽性であった。トマトを除去し抗アレルギー薬を継続内服して症状も治まり、トマトアレルギーも治癒した。

その後も受診される患者さんに、プリックテストでトマトも常時調べることにした。すると陽性者が結構いて、実に乳幼児でもいた。中にはトマトを全く摂取していないという方もいて、その時はトマトケチャップの摂取の有無をきくと、トマトは食べないがトマトケチャップはよく摂取する方もいた。調べるとトマトケチャップはトマトの成分が濃厚であった。しかもトマトケチャップは家庭のみでなく、ファストフードでもよく摂取される。トマトの栄養は良いが、トマトケチャップにして大量に摂取する必要はないのではないか。更に言うと、トマトは野菜として食感もよく食物繊維も多い。トマトケチャップにすると、濃い味が残るだけで他の野菜等の食材の味を消してしまう。逆に言うと野菜嫌いの子供に野菜を食べさせる為にトマトクチャップをかけて食べさせる親もいた。

ある時、よく考麻疹のでるDさんが受診した。最近、何を食べてか判らないが食後に全身の群麻疹が発症し、突然呼吸困難になり意識を失うアナフィラキシーを発症した。治療後に近医で採血で検査したが、食物アレルゲンは陰性で原因不明であった。Dさんは洋食が好きだが和食も食べるので、原因食物の疑いは多くある。問診でトマトは好きですかときくと、トマトは食べていないという。そこでもう一歩踏み込んで、トマトケチャップは摂取していますか聞いた。するとトマトケチャップは好きで、よく料理にかけて食べているという。外食も好きでマクドナルドによく行くという。そこでプリックテストをするとトマトが強陽性であった。他の食物はジャガイモが弱陽性であったが、他は陰性であった。トマトケチャップをやめると蕁麻疹の発症はなくなった。今まで医療機関でトマトクチャップのことは聞かれたことが無かったので、気がつかなかったとのことであった。トマトケチャップを除去し、抗アレルギー薬を継続内服してプリックテストでトマトは陰性化し、摂取しても蕁麻疹は発症しなかった。その後、抗アレルギー薬を中止してもトマトクチャップは異常なく摂取できた。

日本では、某メーカーのトマトケチャップの大さじ1杯(18g)に、トマトが1/2個使用されている。大さじ2杯(36g)なら、トマト1個分となる。マクドナルドのトマトケチャップは、その某メーカーのトマトからも作られている。トマトケチャップ1包は、20gの内容量があり、マクドナルドでは1回の食事で、トマトケチャップを2包から3包食べる場合もある。計算すると、トマト1個分以上のトマト成分が摂取される。当院のある日の外来患者56人中、トマトアレルギー例は23人(41%)であった。その中に治癒例も5例含むのでその例をひくと発症中のトマトアレルギ一例は18人(32%)であった。1ヶ月の患者数から計算しても同じくらいトマトアレルギーが多い。だから計算で日本人では16%がトマトアレルギーとなる。

3)ラテックスアレルギー

Eさんは小学生で軽度のアトピーがあったが、無治療で経過をみていた。鼠径ヘルニアがあり、ある病院で全身麻酔にて手術をすることになり、痲酔を導入し肛門で体温を測定した。すると急に咳、喘鳴、呼吸困難を起こし、まだ手術前であったので、薬剤としては吸入療酔のみで、他の薬剤は注射もしていない。症状政善の為に色々な薬を投与するも改善しない。当時私はその病院に勤務しており、すぐ呼ばれて手術室に行った。全身を観察すると肛門に体温計が挿入されており、もしやラテックスアレルギーではないかと思いそれを抜くと症状が治まった。実に投薬で治まらなかった呼吸困難が肛門の体温計を抜くだけで改善した。体温計の先端はラテックス製でそれによるラテックスアレルギーであった。

後日、Eさんをプリックテストで調べると、ラテックスは強陽性だったが花粉や食物は皆陰性であった。抗アレルギー薬を継続内服しラテックスアレルギーは治癒し、その時点で鼠径ヘルニアの手術も無事に施行された。

その後Eさんは転居し、会う機会がなかったし私も転勤していたが、ある日成人となったEさんが当院を受診した。私を探して他府県から来たのであった。あれから好調であったが、最近アルバイトでラテックス手袋を使い、手が荒れてきたと。診察すると、アトピーに単純ヘルペスと細菌感染症を合併していた。抗アレルギー薬と抗ヘルペス薬と抗生剤で治療し改善したが、その後プリックテストをするとラテックスアレルギーが再発していた。身近でよく使う製品を調べると、ラテックス手袋、イヤーホンのイヤーピース、まつげカーラーのゴムフィラー、ヘアグルー、とラテックス製品を多く使っていた。全てのラテックス製品の使用を中止し、抗アレルギー薬を継続しその後ラテックスアレルギーは治癒した。

そこで受診される患者さんに問診で、ラテックス製品の使用の有無と、使用してアレルギー症状がでていないか、を確認した。そしてラテックスの検査もプリックテストに常時入れた。驚いたことに、昔は医療関係者が使っていたラテックス手袋が、レストラン、食品販売店、また食品と無関係の職種のレジでも多用されている。この一因は新型コロナでのラテックス手袋使用の習慣がそのまま継続されていることもある。しかしアトピーの方ではラテックス手袋を使用して症状の悪化する方は多い。検査すると非常に多くの方がラテックスアレルギーであった。当院ではパウダーフリーのプラスチック手袋を使うように勧めて、その使用で問題はない。しかしプラスチック手袋を扱っている店が非常に少ない。是非、プラスチック手袋を社会に流通させてほしい。尚、新型コロナ騒動でラテックス製品が多用され破棄され、その為ラテックスアレルギーが増加したという、海外からの論文は多くある。また最近は乳幼児向けのラテックス製のおもちゃも多く、生後早い時期からラテックスに接触する。成人向けではラテックス製の眼鏡もあり、ラテックス製品が社会に氾濫している。しかしラテックスアレルギーは日本では理解が少ない

Fさんは全身アトピーで、生物学的製剤を注射して痒みは一時的に減少したが、その内皮膚の赤みが強くなり、全身に赤い発疹ができ、非常に痛い。その為不眠になった。注射をする度に悪化するので、そのことを主治医に言っても注射は続行された。また注射の時はラテックス手袋で抑えられて赤くなり洋みも強くなる。その状況を訴えても改善されない。初診時は全身の単純ヘルペスとMRSA 感染症を合併していたので、その治療を先にして、改善してからプリックテストをするとラテックスが強陽性であった。生物学的製剤は感染症が悪化した場合は使用禁止と添付文書に書いてあるが、今まで受診した生物学的製剤の治療者は1人としてその添付文書のことは医師から話されていない。Fさんは全身の単純ヘルペスとMRSA 感染症で、更にラテックスアレルギーもあり、その薬剤の注射を中止すべきであったが、無視された。

Fさんはまたジャガイモとトマトとキウイとメロンのアレルギーも合併していた。実はラテックス・フルーツ症候群といって、ラテックスと果物や野菜は共通のアレルゲンがあることが多く、アレルギーを合併しやすい。その為、これらを同時に治す必要がある。Fさんは強いリバウンドを起こし、不眠にも苦しんだが、抗アレルギー薬の他剤併用、短期睡眠薬投与、1週間に1回の入浴制限、竹素材の布でのカバーをしっかりやり、2ヶ月くらいでリバウンドが改善し、不眠もなくなった。更に、生活面でも早寝早起き、ラテックス製品の徹底排除を続け、半年でラテックスアレルギーも、ジャガイモとトマトとキウイとメロンのアレルギーも治癒した。

ある日の外来患者56人中、ラテックスアレルギー例は18人(32.1%)であった。その中には治癒例も6例含むので現在のラテックスアレルギー例は12人(21.4%)であった。1ヶ月の患者数から計算してもラテックスアレルギーの割合は同等である。だから単純計算で日本人では10.5%がラテックスアレルギーとなる。そう思うと、ラテックス製品が社会に溢れているのは生活としては便利かもしれないが、約1割の方がラテックスアレルギーになっているという真実を考えると、その情報を社会に流通させラテックスアレルギーの方でも安心して生活できる環境を作るべきではないか。1割という人数は少なくはない。いわば多数弱者のラテックスアレルギ一の方を理解し、救済するべきではないか。