お知らせ

第5回 食とコミュニケーションエッセイコンテスト 特別賞受賞

一般社団法人  食とコミュニケーション研究所による、第5回 食とコミュニケーションエッセイコンテスト(FC-Science Award 2024)で、弊社が提携する木俣肇クリニックの、木俣院長が特別賞を受賞されましたのでお知らせいたします。

食とコミュニケーションエッセイコンテスト受賞作品集は、 「笑顔のかたち」として1~4として販売されいます。

木俣肇院長エッセイ〈全文〉「食と会話の相乗効果でアレルギー改善」

私はアレルギー科医で、アレルギー反応はプリックテストという皮膚にアレルギーの原因であるアレルゲンをつけて、特殊な針でこすり、15分後の膨疹反応で測定している。アレルギー反応は感情の影響を強くうける。私は笑うことがアレルギー反応を減弱させることを発見し、米国の医学雑誌で報告した。

古来、人は生活の中で会話をして笑うことにより、アレルギー反応を減弱させる習慣をとってきたのではないか。しかし今はそれが激減している。対面での会話も減り、インターネットを介したやり取りでは笑いは生まれない。食事は会話をする交流の場で、笑いを生み出す最適なコミュニケーションではないか。そう考えて、食と会話がアレルギー反応に及ぼす影響を以前調べた。

各グループにアトピーの方10人に参加してもらい、私が調達したお弁当を食べ、食前と食後にダニに対するアレルギー反応を(1)食事のみ、(2)会話のみ、(3)食事と会話、として3グループで検査した。会話は20分として自由に話してもらった。尚、参加者同士は交流がなく、検査の日が初対面であった。全員がダニにアレルギーがあり、(1)食事のみでは軽度アレルギー反応が増強した。食事はエネルギーも使うし負荷はかかるので、ストレス反応として軽度の増加は理解できる。(2)会話だけではアレルギー反応は不変であった。普通に会話するのは負担にもならないが、それ自体ではアレルギー反応に影響はしない。(3)食事と会話では、アレルギー反応の減弱がみられた。食事と会話の相乗効果と言えるが、機序は単純ではない。食事ではアレルギー反応が増強するのである。その効果を打ち消し、さらに減弱効果がある。

そこで会話の内容が変わっていないか、検討した。食事のない会話では、初対面の緊張もあり手持ち無沙汰もあり、会話がスムーズにいかない。食事をしながらする会話では、仲間意識が強まり、手持ち無沙汰がなく会話がスムーズにできていた。

さらに会話のみでは参加者は笑い合うことはなく、アトピーの症状を言い合い、現状の評価に終始していた。しかし食事と会話では大きな笑い声が頻繁に聞こえた。内容も、アトピーのことも改善への道のりや、将来への希望、がんばって治癒したい、等の前向きな話が多かった。つまり、食は会話を盛り上げ、内容を豊機にして親近感を増し笑うことも増やす、そのような健康に大切な感情のコントロールをしている。食は栄養を摂取する為に大切であるが、社会的な意味ではコミュニケーションも持たせる、また健康的な意味では感情を豊かにして相手との時間を共有する大切な時間である。現代は孤食ということばができ、相手がいない食事が当然となっているが、実は感情の成熟を阻害しているのではないか。共食での感情は笑いを含み、アレルギーの防御には必要なものである。その感情が減ればアレルギーは悪化する。またこの効果はアレルギー反応減弱だけではなく、アトピーの痒みの軽減や皮膚症状の改善にも結びついていた。

同様な状況は職場でもある。以前、私が治療しているアトピーの方が数人勤務しているA会社で、治療に役立つ習慣はないか、と社長にきかれた。私の治療でアトピーは改善しているが、個人差が大きく改善が早い方と遅い方で感情のずれがあるので、是正したいとのことであった。

社長もアトピーがあり私が治療していたが今は治癒している。日々の状況の話をきくと職場に小さな食堂があるが、昼休みに昼食を食べる時間もまちまちで、皆孤食をしていた。そこで昼食を食べ始める時間を決め、全員がそろって食堂に行く。そして社長の「いただきます」の一言で皆食べ始め、食事中に会話をするようにすすめた。最初は皆緊張するので、1分間だけ順番に一人がスピーチをすることにした。内容はなんでもいい。とにかく1ー2分間話し、それを他の人が食事しながらきく。最初は、周囲の方はきいているだけであったが、次第に質問も出て、また食事中に会話も多くなってきた。そこでそのスピーチをやめてみたが、やはり会話は多いことが自然に続いた。そのうちに、アトピーの方では症状の政善が全員で早くなってきた。アトピーを媒介にした会話の花が咲く。結果的に、A会社のアトピーの方は全員治癒した。数週間後にアレルギーのプリックテストをすると、アトピーの方はダニに対するアレルギー反応が有意に減弱し、皮膚症状も政善傾向であった。

食と会話の相乗効果は年齢を問わず効果がある。小学生のアトピーが数名受診している小学校で、給食の時間に言い争いもあり、騒がしいので何か良い方法はないか、と教師に聴かれた。詳細をきくとアトピーで食物アレルギーの児と健常な児の間によく喧嘩がある。食物アレルギーの児は除去食で別メニューとなり、更に給食のアレルギー混入物を確認するので時間がかかる。一方健常の児ではそれはなく、配膳はすぐに終わるが、食物アレルギーの児の配膳が終わるまで待たなくてはいけない。そこで言い争いが起こり、険悪なムードになる。そこで配膳中に順番に児童の1分間スピーチをすることを提案した。スピーチの間は静かに聴くと約束させた。最初は騒ぐ児もいたが、自分がスピーチをすることで気持ちもわかり、次第に静かに聴くようになった。そのうちに食事しながら児同士が積極的に会話をするようになった。今では食物アレルギーの児と健常の児では隔たりがあったが、それがなくなった。以前は食物アレルギーの児はアトピーもあり食事中も痒みを訴えていたが、痒みが減って食事と会話を楽しめるようになった。それは2ヶ月続け、その時点で食物アレルギーの児のアレルギー検査をすると、卵や牛乳のアレルギー反応が有意に減弱していた。

幼稚園でも同様な効果が見られた。給食の時、おとなしくせず食べ散らかす園児が数名いた。園児なので騒々しいのは仕方が無いが、食事はきちんとするべきである。数名の食物アレルギーの園児もいて、その世話もあり先生は給食時には非常に多忙である。さらに食物アレルギーのある園児はアトピーと多動症もあり、痒みで頻繁に肌をかきむしり、阿鼻叫喚と言ってもいいくらい、混乱していた。そこで給食のはじまりに先生が園児達に話しかけることをした。最初は聴いていなかった児が、次第に先生の話を聴き、食べながらも聴くようになった。そし食事中も園児どうしで話し合いながら食べるようになり、皆見違えるようにおとなしくなった。食物アレルギーの児は、辛みが減って食事と会話を楽しんだ。食べ散らかすこともなくなった。なによりも園児が笑い合って食べる姿は先生達も驚き、そして喜んだ。一番よく笑うのは、アトピーと多動症のある園児であった。つまり、食と仲間との交流の会話は、アトピーのみを減弱し、多動症も改善させたのである。

その園児はピーナッツアレルギーが強く、ピーナッツ類の混入が多い現代の食生活では、かなり除去が多く不自由な日々であった。しかし、ピーナツツのアレルギー検査をすると、以前より著明に改善していた。保育園の先生方にとっても管理がしやすく、その後もこの試みは続けられた。そして10ヶ月後にはその園児のピーナッツアレルギーは治癒した。もう除去する必要がなくなったことを告げると、その園児はうれし泣きをした。幼くても除去の辛さはわかっていた。

辛さをはらすために騒いでいた。しかしアレルギーが改善して、普通の食生活になれば楽しく、仲良く皆と交流して心が安らぐ。その園児は多動症も改善した。アトピーと食物アレルギーでの痒みと不自由な日々が、自暴自棄になってより症状が悪化する悪循環になっていた。それが皆で食べる落ち着いた食事と、心が踊る会話で改善し、更にアレルギーも改善する好循環になっていた。

最近は孤食として、家庭でも一人で食事をすることが多い。昔は家族そろって、食事と会話を楽しんだ。そのような本来あるべきことがなくて、色々な弊害ができているのが現代ではないだろうか。目には見えない。しかし数字にするとはっきりわかる。ある成人アトピーで家族のある方30人に、最近1週間の夕食の何日孤食をしたかとアンケートをとった。すると驚いた事に20人は1週間孤食で、7名は5日間孤食、3名は2日間孤食であった。1週間孤食のない方はいなかった。30人中16人は仕事をしていて帰宅が遅いのが理由である。しかし残りの14人は主婦であるが、夫や子供の帰りが遅く孤食になっていた。そこで1週間、孤食をやめて家族とともに食べ、食べながらよく会話をするように、こと本人または主婦の場合は夫に頼んだ。結果的に10人の方が1週間孤食を回避できた。その方達でダニに対するアレルギー検査をすると、有意に減弱していた。また自覚症状として痒みも改善していた。

アトピーは激増している。しかし治療としては対症療法の外用薬が流通しているが、中等度以上のアトピーの方々は政善せず、当院を受診する。そのような方々で食事の状態をきくと孤食が多い。家族と食べても会話もなく、食べ終わるとすぐ自室に閉じこもってしまう。そこでそのような重症アトピーの方々に、2週間孤食をやめて、家族と食事をして自分から話すようにお願いした。7人の方がそれを実行でき、ダニに対するアレルギー反応を実行前と後で検査すると有意に減弱していた。1人は著明に減弱していたので、状況をきいた。「会話して話すのがこんなに美味しいとは知りませんでした。今後も続けます。」と喜んでいた。

現代は、この効果が欠乏していると心配する。人と人の会話が、食を媒介にしてよりアレルギーを含めた病気の改善することを願う。